裁判所での手続き
労働者が自分で行う手続き
裁判所の手続きで代表的なのは民事訴訟ですが、必要な書類の作成・準備や判決が出るまでの期間を考えると、労働者が一人で行うのはいろいろと厄介だと思います。
(そのために、訴訟の代理を職業としている人がいるわけです。)
労働者が自分で行う手続きとしては、「支払督促」、「小額訴訟」、そして「労働審判制度」が選択肢として考えられます。
(どれを選択すべきかを考えるために、それぞれの特徴を理解しましょう。)
支払督促
支払督促とは、相手方が支払わない場合に、申立人の申立てだけに基づいて裁判書記官が行う手続きです。
(裁判官が審理をするものではありません。)
支払督促の特徴
- 書類の作成・準備が容易である。
- 支払督促の発付までの期間が短い。
- 金額の大小に関係なく利用できる。
- 民事訴訟の半額の手数料と郵便切手だけで、申立てをすることができる。
- 相手方からの異議の申立てがなければ、仮執行の宣言を得て強制執行に移ることもできる。
略式の手続きですから、手続きの進行が速いです。
しかし、相手方が異議申立てをした場合には、訴訟手続に移行することを留意しなければなりません。
少額訴訟
少額訴訟とは、簡易裁判所で行われる少額の金銭の支払いを求める手続きです。
少額訴訟の特徴
- 60万円以下の支払いを求める場合に利用できる。
- 審理は原則として1回で行われる。
- 証拠書類や証人は、審理の日にその場ですぐに調べることができるものに限られる。
- 分割払や支払猶予、遅延損害金免除の判決が、言い渡される場合がある。
速やかに解決を目指すのに適していますが、判決に対して不服がある場合に地方裁判所に控訴することはできません。
(判決をした簡易裁判所に、異議を申し立てることはできます。)
労働審判制度
労働審判制度とは、労働審判官(裁判官)と二名の労働審判員(労働関係の専門家)で構成する労働審判委員会が個別労働紛争を審理し、調停または労働審判により解決を目指す制度です。
労働審判制度の特徴
- 自業主と個々の労働者との間の労働トラブル(個別労働紛争)が対象。
- 労働関係の知識と経験を持つ二名が、労働審判員となる。
- 原則として3回以内の期日で審議を終える。
- 確定した労働審判や成立した調停の内容は、裁判上の和解と同じ効力があり、強制執行を申し立てることが可能。
労働審判制度は民事訴訟より迅速で、書類の作成・準備も比較的簡単です。
しかし、労働審判に対して異議申立てがあった場合には、民事訴訟に移行します。